2012年8月6日月曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 荒武里衣さん(8) - 卒業論文(続き)・修士論文

五ヶ瀬中等教育学校2004年卒業生の荒武里衣さんへのインタビューの続きです。

前回は、研究室や卒業論文についての話を聞いていきました。
今回は引き続き研究についての話の続きです。

前回の記事はこちら↓



■卒業論文の話(続き)

―物質をとり出すっていうのは、具体的にはどうやるんですか?

物によって変わりますが、私がやっていた生物(海綿やソフトコーラル)では、試料を四角大に切って有機溶媒(アセトン等)、イメージで言うと除光液のような液体に入れます。

有機溶媒につけると、その生物の色々な成分が溶けてくるので、その成分がごちゃまぜのエキスを有効成分だけを取り出すように分離していきます。

最終的にオイル状だったり粉状だったりする不純物を含まない成分(化合物)を取り出します。そして、その物質がどのような化合物かを調べる為にいろいろな機械にかけます。

その機械で、水素の数、炭素の数とかっていうのを調べたり、どの水素とどの水素が近くにあるとかっていうデータが出てきて、それをパズルのように一生懸命ひもといていく感じです。

この水素が近くだから、これにつながっている炭素と酸素は近くで…みたいな。そうやって化合物を構築していくんです。

できた化合物が過去に見つけられているかどうかっていうのを、論文とかをみてガーッと探して、「ない!」ってなったら新しいものが見つかったものになるんです。

もちろん専用のデータベースとかもあるので、見逃さないように気をつけます!
結構たいへんです。。。

先生はすごくて、生のデータをパッと見た段階でおおよそがすぐに分かるんです。

普通はデータのグラフのピークの具合をいろいろな情報と照らし合わせて何の化合物か突き止めるんですけど、先生は生のデータのそのピークの状態を見ただけで、「うん、これは新しいね」とか「これはもう見つかってるよ」とか分かるんです。

その先生は海洋天然物の分野ではわりと有名な方だと思います。


■修士論文の話
―修士に入ってからはどういうことをしたんですか?

卒論って、行き当たりばったりだったから、修士で先生と何をするか相談して、どんなテーマがあるかっていうのを教えてもらいました。

最初は、100とか200とかあるサンプルを、C型肝炎に効くかっていうのを調べていきました。でも、その試験は琉大では調べられなかったので、共同研究者にサンプルを送って調べてもらうんです。

そうすると、結果が出てくるまで、「もうやることなーい」みたいな感じで暇になるんです(笑)
修士に行ったら結構頑張ろうと思ってたので、「先生、暇なんすけどー…」って言って(笑)

そしたら、私と同じ学年の子がやってた研究の続きをするかっていう話になりました。残りがちょっとだったので、それを終わらせますって言って始めたのが、化合物を抽出した生物の遺伝子を確認していく研究だったんです。

それが、今実際に私がやっている実験の元になってるんです。


―それはどういう内容なんですか?

最初の方にも言いましたが、おおまかに言うとキノコみたいなソフトコーラルと、それに含まれている化合物の関係を調べていく感じです。

最初に、キノコみたいなやつ、ソフトコーラルが化合物を持ってるって言ってたじゃないですか。ソフトコーラルは1つの個体に、だいたい1種類の化合物がたくさん含まれてることがわかっているんです。

それも、必ず同じ物質じゃなくて、個体によって結構いろんな化合物の種類がとれます。

その化合物の種類とソフトコーラルの種のパターンはまったく調べられてなかったんです。どの種にどの化合物が入っているのか。。みたいな。

何となく取ってきて今回はAが出たねー、次はBが出たねーという感じで。化合物の違い(種類)っていうのは、炭素骨格は一緒で付属のものが違うっていう感じで同じ系統の類似化合物がいくつか出てる感じでした。

それで、化合物のパターンは、もしかしたら、ソフトコーラルの種によって違うかもしれないって言うことになって調べようって話になりました。

実はその話って、5-6年前にも一回先生がやってたんですけど、その時は化合物のタイプとソフトコーラルの種が一致しなかったんです。

同じソフトコーラルの種でも違う化合物タイプがたくさん見つかったりして、、、

結局、種と化合物は関係ないっていう結論になってたんですけど、その時に種分類をした方法が形態による分類だったんです。

ソフトコーラルの見た目ってほとんど一緒で、パッと見ても何が何だか分かんないんです。ちょっと難しくなるんですけど、見た目で分かるのって種の1つ上の属までなんです。

その下の細かい分類は、一回細胞を溶かして、中に持ってる小さい骨の形を見てはじめて種が分かるんです。

その小さな骨を使ってソフトコーラルの種を決定して、化合物と照らしあわせたときは、さっきも言ったように化合物との関係性がわかりませんでした。

でも、ちょうどその当時の1年前か2年前にソフトコーラルの遺伝子解析が行われて、種分類がちょっと変わったかもっていう話があったんです。

それで、遺伝子解析と化合物をリンクさせようっていうことで、遺伝子の仕事をするようになったんです。

結果として、ソフトコーラルの系統樹と化合物が大まかにリンクしました。実は、これは結構珍しい結果だったんです。

例えは、フグには毒がありますよね?

フグ毒っていうのは、フグが食べてる藻が作っていて、その藻が蓄積されてフグが毒を持つようになるんです。

実は、こんな話は結構一般的なんです。海洋生物の中で化合物が見つかったら、実際に作っているのは、その海洋生物に共生している小さなバクテリアでした、とか、藻でしたっていう。

ソフトコーラルはサンゴだから、共生している藻がいます。
その藻が光合成をして、サンゴはそこからエネルギーをもらっているんです。
サンゴも一般的に考えるとそうだよねっていう話になります。

だから、私はこの実験の時、サンゴの遺伝子と藻の遺伝子の両方やったんです。
そして各個体からとれてきた化合物と、サンゴ・藻の両方の遺伝子を比べてみました。

その結果、藻ではリンクしなくて、サンゴだけでリンクしたんです。
だから、これは珍しいな、と。

それで、最初は沖縄本島だけで調べてたんですけど、場所を変えて石垣とかでも当てはまるのか調べました。
そうすると、またちょっと違う結果が出てきて。

そんなんだったら実際に作ってる遺伝子を特定して、どっちの遺伝子なのかを特定した方が速いっていうことになって、そうやって広がってくテーマを博士で今やってるっていう感じですね。



今回は以上です!

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