2012年7月1日日曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 荒武里衣さん(1) - 研究分野の話

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー、第5弾!
今回は、2004年卒業生の荒武里衣さんです。

荒武さんは大学から沖縄に来ていて
今は琉球大学の博士課程で研究を行っています。

実は、在学中も卒業後もそんなに直接話す機会はなかったんですが、
なんと、僕の奥さんと共通の友達がいるらしくて
僕の結婚式(沖縄でやりました)の二次会に来てくれたんですねー。

それをきっかけにして、この間のゴールデンウィークで
奥さんの実家に規制した時に会って話を聞きました。

研究の話がとても面白いし勉強になるのでぜひ読んでみてください!

では、以下インタビューです。
今回は、研究の内容についての話が中心です。



―これまでに民間企業で働いていたり、県庁で働いていたりする人に話を聞いたので、大学にいる荒武さんに話を聞けるとまた違った角度で話が聞けて面白いかなと思ってます。

そうですね。参考になったらいいですけど(笑)


■研究内容について


―なりますよ!荒武さんは今は大学でしたっけ?

今は大学の博士課程で3年目です。一応最後の年です。


―どういう研究をしてるんですか?

サンゴの研究です。サンゴの中でもソフトコーラルと呼ばれている仲間で、きのこみたいな形のサンゴです。そこに関連して二次代謝物っていう…


―なんかどんどん難しくなってきたんですが(笑)まずソフトコーラルっていうのは何なんですか?

やわらかいサンゴですね。


―なるほど、英語でサンゴをコーラルというので、そんままですね(笑)

そうです(笑)もう少し詳しく言うと、サンゴが体内で生産した化合物を粘液などと共に排出しているんですね。そこで排出されてくる化合物について調べています。

ここからは少し専門的な話になりますが、生物っていうのは、体の中で酵素や補酵素の作用によって物質を合成しています。要するに、体の中でいろんなものを作っているんですね。この何かを作る時の合成反応や化学反応の事を代謝とよんでいます。

そして、代謝には2種類あります。一次代謝と二次代謝です。これは何で区別するかというと、生物にとって必須のものを作るかどうかです。

一次代謝では、生物の成長、発生、生殖に必要なものを作ります。いろんな生物に共通して含まれている、糖、タンパク質、脂質、核酸(DNA)などを生成します。これに対して、二次代謝では、生物にとって必須ではないけれども、生存競争や美しさ等に関わっていたりするようなものを作ります。何の為にあるのか全くわかっていない化合物もこれに含まれます。

一次代謝でつくられる物質のことを「一次代謝物」、二次代謝でつくられる物質のことを「二次代謝物」といいます。一次代謝物は生物にとって共通の化学成分なんですが、二次代謝物はそれぞれの生物にとって固有の産物です。二次代謝物には、例えば、色素とか抗生物質とかが含まれますね。

人間は、野菜、穀物、肉などの食べ物に含まれる一次代謝物を栄養として摂取しています。逆に、必須でないもの、例えば、薬用として利用しているものは生物の二次代謝物質がほとんどです。漢方やカビに含まれるペニシリン、マラリアの薬のキニーネなんかがそうですね。

マンガのワンピースでも、似たような話がありましたね(笑)空島編のシャンディアの過去の回想で、ノーランドが作った「コニーネ」は「キニーネ」を参考にしてるようです。


―おお、ワンピース出てきた!ちょっとホッとしました(笑)でもそんなところにつながってる話があるなんて面白いですねー。荒武さんはその中のどんな分野を研究しているんですか?

最初は、化合物、さっき言っていた二次代謝物がガン細胞に効くかどうかとか製薬系の研究をしてました。天然物有機化学とという化学の分野だったんです。

生物が作りだす物質の分野って、物質がどう人に役に立つかっていうところに注目が集まるので、生物自体が何で二次代謝物を持ってるかとか、実際に生産している生物が二次代謝物を何に使ってるかとかって研究はほとんどされてないんですよ。


―え、そうなんですか?それはサンゴの?

サンゴでも海洋生物なんでもそうなんです。自分達が高校くらいの時に海洋生物からいろいろ新しい化合物を取り出すっていうのが流行ったんです。いろんな軟体動物とかサンゴとかも全部含めてたくさんとってきて、物質を抽出してどんな物質が入ってるかとか調べられました。それは全部、人間にとって役に立ちそうな物質を見つけるためです。

これが私が最初にやっていた天然物有機化学という分野です。ちなみに今やっているのは遺伝子機能解析学っていう分野ですが、これについてはまた後でお話ししますね。

天然物有機化学の目的は、人間にとって役に立ちそうな物質を見つけて、それが本当に役にたつかどうかを確認し、もし役に立つのであれば、その物質をきちんと供給していく方法を作っていくことです。


■天然物有機化学の歴史について

―両方とも舌かみそうな名前ですね(笑)その天然物有機化学っていう分野はいつくらいからあったんですか?

実は、天然物有機化学という分野自体の歴史は古くからあります。もともとは、生物のみが作れると考えられていた物質を扱う化学の分野の事を有機化学といっていました。

それが、19世紀前半に生物体内でなくても有機化合物を合成できることが分かったんです。また、天然には存在しない化合物も合成されるようになり、有機化学は炭素化合物を扱う化学の分野に拡張されました。そこで、その中の一分野として、生物が生産する物質を扱う分野を天然物有機化学と呼ぶようになりました。

有機化合物を合成できることが分かると、生物から得られる貴重な物質を人工的な合成により供給するための研究が、天然物有機化学の主なテーマとなりました。具体的には、染料や医薬、香料などですね。

その後、19世紀後半に有機化合物の構造化学が確立してくると、有機化合物の構造を決定することも天然物化学の研究として行われるようになります。ただ、昔は便利な技術や機会がが無かったので、かなり苦労して研究していたようです。

20世紀に入ると、技術がどんどん進歩して、物質の構造が簡単に分かるようになっていきます。そして、現在でも、天然物化学は新しい医薬品となる物質の候補を探したりする目的で盛んに研究されています。


―なるほど、結構歴史があるんですねー。

そうなんです。ただ、天然物有機化学という分野はとても古いので、最初の頃は、陸上に生息する植物が主な対象でした。植物から取り出した成分をもとにする香料や薬品、抗生物質が今たくさんあるのは、植物の研究が昔から盛んだったからです。

それが、化学技術が発達してくると、研究対象が様々な生物に移っていきました。陸上では植物が主体だったんですが、微生物などの小さな生き物に移りました。さらに、海洋生物も対象になってきました。


今回は以上です!

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