2012年4月20日金曜日

相手のことを考える前に自分のことを考える~「対人援助の技法」から~


前回までの記事でインタビューをしていた
五ヶ瀬中等教育学校卒業生で僕の同学年の田部篤太郎君から
以下の本を紹介してもらって読んでみました。


この本が面白かったので紹介がてら
五ヶ瀬中等教育学校での生活でも
関連しそうなポイントをみてみたいと思います。

■「対人援助」って?
まず、「対人援助」ってあんまり聞きなれなかったんですが
福祉の世界では一般的な用語みたいですね。

用語の詳しい定義は良く分かりませんが、
少なくともこの本を読んだ感じでは
福祉の仕事をしている側の人が
福祉のサービスを受ける側の人に対して
支援していくことを表しているようです。

そして、対人援助の技術とは、
その支援の際にどういう考え方やどういう姿勢で
取り組んでいけば良いかといった内容のようです。


■「対人援助の技術」とは自分に働きかける技術でもある
最初に対人援助って聞いた時、
人を助ける技術っていうような感じがしていました。

ただ、読んでいくとどうもそうではない。
っちゅうか、のっけからこういうふうに書いてありました。
「本書でいう援助技術は、援助者が自分にどのように関心を向けるか、自分の感情をいかに吟味するか、そして自分の個性やもち味、あるいは援助に対する熱意をいかに活用するかなど、援助者が「自分に働きかける」技術である。」piii
どういうことかというと、
相手に働きかけることに意識を集中してしまうと
自分がそもそもどういう意気込みや先入観をもっているかに意識がいかなくなる。

そうすると、その意気込みや先入観にとらわれてしまって
自分の緊張や焦り、相手に対する感情や思い込みが邪魔をして
相手に対して働きかけるだけの余裕が減り、
良い形で働きかけることができない。

なので、まずは自分が相手に対してどういう構えを持っているのか、
例えば、緊張しているなら「おれ今緊張しているな」とか
相手が苦手だと思うなら「この人苦手だと思ってるな」とか
そういった自分の感情や状態を把握することが大事。

その上でそこからできるだけ自由になるように工夫して
相手に対してフラットに接することができるようにして接すれば
良い形で働きかけることができるという話。

なるほどなーと思いました。


■「相手のために」という熱意も使いよう
上と関連する話ですが、他の例で面白かったのは、
相手を手助けすることに熱心になっているような場合の話。

どういう熱意をもっているのか、どうしてその熱意をもっているのか
といったことを検討することが大事。

その熱意っていうのは突き詰めると
結構利己的なところから来てたりしていて、

  • 自分が有能であると証明したいために熱心になっている
  • 相手が好みの人だから一生懸命になっている

っていうことだったりかもするかもしれない。

それが分かった上で、その熱意の有用性と危険性を検討して
そのまま持っていて良い熱意かどうかを検討することが大事。

なぜなら、自分が熱意を込めることによって、
相手が自分で問題解決能力を発揮する機会を奪っている可能性もある。
「相手のために」と思って熱意をもってやっていることが
結局相手のためにならず、むしろ、相手の邪魔になってしまうことすらある。

やはり上の話と一緒で、相手のためという視点の前に
自分は何のためにそれをやろうとしているのか、
そして、それが本当に相手のためになっているのかを
検討していくことが大事ということだと思います。


■五ヶ瀬中等教育学校での対人援助
最後に、この話が五ヶ瀬での学びや生活の上で
参考になりそうな点が思い当たったので書いておきます。

1つ直接的に思い当たるのは校外実習ですね。
今はどうかちょっと分かりませんが
僕の在校時は老人ホームとか養護学校とか
社会福祉関係の施設に訪問する機会がありました。
たぶん今も似たような活動があるんじゃないかと思います。

そういう機会で訪問した時に
いろいろコミュニケーションをとると思うのですが
その時にまず自分はどういう姿勢でのぞむのかを
考えてから行くと実りが多いのではないかなと思います。

自分の興味がある分野なので張り切って行こう
と思ってるかもしれませんし、
学校行事だからイヤイヤ言っているだけかもしれません。
どのような気持ちにしても、自分がどういう気持ちでいて
訪問して何をしようとしているのかを把握することで
ただ漫然と行くよりは得られるものが多いと思います。

もう1つ考えられるのは、勉強を教え合う場面ですね。
福祉の世界で言う「対人援助」とは外れるかもしれませんが
相手を手助けするという点では共通かなと思います。

僕も結構教えるのが好きで
同級生や下級生に教えたりしていましたが、
今思うと、役に立ちたいという思いだけでなく
優越感とか存在意義の証明とかそういう部分が
多かれ少なかれあったと思います。

そういうことを踏まえて考えると
例えば、単に答えを教えてしまうと
自分の優越感という部分では満たされるけど
真に相手のためになっているかというとそうではないかもしれない。

こういう時に、自分が何で相手に勉強を教えたいと思っているのか
その気持ちの源は何なのかを把握していれば
より良い対応の仕方を考えられたんじゃないかなと思います。

学校の勉強を教える機会っていうのはとんとなくなりましたが、
ものを教えるっていうのはいろいろありますので
このことはまた心に留めておきたいなと思います。

3 件のコメント:

  1. 早速、読んでくれてありがとうございます。
    しかも奥の深い評価まで・・・。脱帽です。

    対人援助技術は、なにも福祉サービスに限定したものではありません。
    生活する中での「困難(生きづらさ)」を、その人の視点に寄り添いながら解決・解消に向けて相談にのる技法といえると思います。
    ケースワークの原則として代表的なものに、「バイスティックの7原則」というのがありますが、
    ①個別化の原則
     「問題」はその人固有のものであり、他の問題とまとめたりしてはいけない。
    ②受容の原則
     相談者の考え、訴えは、その人の人生、環境によるものであり、そのプロセスを理解し、受け入れることが大事。
    ③意図的な感情表出
     相談者が自由に感情を出せるよう、ワーカーも自分の感情の出し方を意識しなければいけない。
    ④統率された情緒的関与
     ワーカーは、相談者の個々の感情・訴えに振り回されるのではなく、問題解決に向けて自分の感情・態度を統制しなければいけない。
    ⑤非審判的態度
     ワーカーは相談者の訴えに対して善悪を決める立場ではなく、相談者の考えを否定したり、決定してはいけない。
    ⑥自己決定の原則
     あくまでも、相談者自らが決定できるよう、ワーカーは関わる。
    ⑦秘密保持
     相談内容を口外してはいけない。守秘義務

    ・・・といった感じです。
    でも、ワーカー(相談援助専門職)も、自分の価値観や特性、相性などがありますから、自分のことを知りながら、相談に応じていくことが重要になります。
    そうでないと、知らず知らずのうちに、相手に振り回されていたり、相手を振り回していたりすることがよくあります。

    その、「自分を知る」という話になったときに、ドン君が着目した「自分に働きかける」技術ということになるんだろうと思います。

    じゃあ、自分を知るためにはどうしたらいいのか。
    「エゴ」との葛藤ですよね・・・・。
    そこに、「悩み」「もがき」「悶々」といった今までの過程の振り返りと、これからの「理想」「目標」の展望を、今の自分を起点に考えることがあるんではないかと、私自身は思います。
    そして、それを一緒に考えてくれる人として、同じ時間を共有して別の視点で自分を見てくれている同級生や先輩・後輩がいることが、私自身には大きな力になったように思います。

    ドン君がいうような優越感とかも当たり前に求めちゃうものですし、でも、それを自覚するとしないは大きな差がありますもんね。同感です。

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  2. おー、丁寧なコメントありがとう!
    こんな原則があるんやねー。確かに社会福祉の分野に限らず、誰でも日常的に家族や友人の話を聞いたり、あるいは職場の同僚や部下の話を聞いたりする時にも役立ちそうな考え方やなー。

    あと、
    「自分を知るためにはどうしたらいいのか。
    「エゴ」との葛藤ですよね・・・・。」
    っていうのはホントそのとおりやなーと思います。というか、この本を読んでから気付かされました。

    自分の理想や目標、そして自分のエゴをまず見つめた上で相手に向かう、そうすることでもっとより相手に寄り添うことができるんやろうなーと思いました。

    そういう意味では、田部が五ヶ瀬で過ごしたように、「同じ時間を共有して別の視点で自分を見てくれている」人を得られたっていうのはやっぱ貴重な意義なんやろうなーと思います。

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  3. 学びの森の人って理想的な人が多くて、まさに森林理想郷の住人って感じですよね。彼等の話を聞いていると吐き気がします。学びの森はいつ滅びる日が来るんでしょうか?

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