2012年5月31日木曜日

グローバル人材の教育システムと五ヶ瀬中等教育学校(後編)

前回は、グローバル人材になるために
必要だと考えられる力について考えました。

そこで、今回は、それを踏まえて、
五ヶ瀬中等教育学校で過ごす上で
グローバルに通用する人材になるために
どういう考え方や力を身につけたら良さそうか
考えていきたいと思います。


■グローバル≠海外
まず1つ述べておきたいことがあります。
それは、「グローバル≠海外」ということです。

もちろん、この2つは通じるところは大きいのですが
あえてこういうことを言うのには理由があります。

それは、「グローバル=海外」と考えると、
まず先に海外に出て行くためにはどうすればいいか
という考えが先に来てしまい、
どうしても語学や渡航先、渡航方法などの
ツールや手段に目がいってしまうからです。
(少なくとも自分はそういうイメージを持っていました)

ですので、「グローバル人材」を目指そうと考えると、
英語を鍛えなきゃ、とか、海外留学の方法を調べなきゃ
とか思っちゃいそうな気もしますが
その前にやることがあるように思います。


■英語の前にやるべきこと
グローバル人材というのは、
日本を含めて世界中どこにいても
通用する人材のことを指すと思います。

英語の勉強ができるようになったからと言って
それで通用する人材になれるわけではありません。
TOEICやTOEFL、英検などの試験でいくら高得点をとろうが
コミュニケーションができなければ意味がありません。

もちろん、先の記事でも書いたように
英語はベースにはなります。
ただ、それはあくまでもツールとしてです。

それ以前に、自分自身を表現する力や
創造性やリーダーシップを磨くことの方が大事です。

そして、こういった力は日本にいても必要なものです。
結局のところ、グローバル人材に求められる力っていうのは
別に海外だけで求められるものではなく、
日本でも海外でも必要なものだと思います。

ですので、海外どうこうということを考えるよりは
まずは場所に関係なくこれから先
身につけていかんといかん力は何か、
その本質的なところはどういうところにあるのか
といったことを考えていった方が、
海外のことを先に考えるよりも逆に近道な気がします。


■五ヶ瀬中等教育学校の理念にもグローバル人材の育成
ここで、今一度学校の設置の理念を見てみましょう。

まず最初に
「来るべき21世紀の日本を担い、国際社会で活躍する人材を育成する」
とあります。

「国際社会で活躍する人材」
というのは「グローバル人材」と言い換えてもいいでしょう。

つまり、五ヶ瀬中等教育学校では、
単に地域のことを学ぶだけではなく
それをベースにして日本や国際社会で
活躍していく人材の育成が目指されているのです。

自分が在学中はあまりこれを意識したことがなかったのですが(^^;)
やはりこれから

理念の中ではさらに、
「森林という自然を教育のフィールドとして、自然に対する畏敬の念を育て、若人らしい野性味や冒険心の育成と回復に努め、 豊かな人間性と創造力・協調性を培い、主体的に生きる人間の育成を図る。」

「主体的な学習や体験学習、体験活動等を通し、自己教育力の育成を図る。」
と述べられています。

キーワードとしては主体性、協調性、創造性などがあがっています。
このあたりは、前回の記事で述べた
セルフスターター、コワーク、学び続ける力
などとも通じるものがあると思います。


■五ヶ瀬でやったら良さそうなこと
理念にもグローバル人材の育成につながることがうたわれていますが、
それでは五ヶ瀬時代にどういう経験をしたら良いのでしょうか。

この問いの答えを主体的に考えていくこと自体が大事だとは思いますが、
僕が社会に出てから振り返って感じたことで
参考になりそうなことを2つ書いておきます。

まず1つ目はリーダーシップをとる経験を増やすことです。
以前も書いたかもしれませんが、
五ヶ瀬は1学年最大40人と少人数の学校ですので
自分がリーダーになって何かをする機会がごろごろ転がってます。

良いリーダーには、ある日突然なれるわけではなく、
やはり練習したり、場数を踏んだりすることが大事だと思います。
そうした観点から、五ヶ瀬ではそういった場がたくさんありますので
積極的にその機会をつかまえると良いんじゃないかなと思います。

とは言っても、僕自身はあまり積極的に
そういう機会をとったわけではなかったので
あまり偉そうなことは言えませんが…
ただ、自分自身への反省も込めてそう思います。

もう1つは、セルフスターターになる、すなわち、
自分が中心になって何か新しいことを始めてみることをお勧めします。

これも自分自身があまりできていなかったことで
今振り返ってやれば良かったなーと思うことでもあります。

学校や寮で新しい行事を考えるのでも良いですし、
部活で新しい練習の方法を始めるのでも良いですし、
友達と新しい遊びをやり始めるのでも良いかもしれません。

どんなに小さなことでも
自分が主体となって何かを始めてみた経験というのは良い財産になり、
その後の人生にとっても良い経験になると思います。

最後に、協調性やコワークの部分というのは
五ヶ瀬で生活していれば嫌でも身につくと思うので(笑)
これはあまり明示的に意識しなくても良いかなと思っています。
なので、優先順位としては、リーダーシップとセルフスターター
この2つを意識できると良いのではないかなと思います。


とりあえず、グローバル人材というキーワードで
感じたことをつらつらと書いてきました。
このテーマは、自分自身の今後にも関わることでもあるので
また継続的に考えていきたいなと思います。

2012年5月30日水曜日

グローバル人材の教育システムと五ヶ瀬中等教育学校(中編)


前回、以下の記事を紹介して、
グローバル人材とその育成について触れました。


この記事の中で、グローバル人材の育成に関連して、
ボーディングスクールが紹介されていますが
これは全寮制の五ヶ瀬中等教育学校にも通じるところがあります。

今回は、グローバルに通用する人材になるために
どういう考え方や力を身につけたら良さそうか
考えていきたいと思います。

その上で、次回、五ヶ瀬中等教育学校で過ごす中で
その力をどう身につけていけばいいのか
といったことについて考えてみたいと思います。


■グローバル人材になるために
紹介した記事の最初の方では、
学歴とリーダーシップについて詳しく述べられていました。

また、ボーディングスクールの教育のところでは、
リーダーシップに加え、個性や創造力もキーワードとして挙げられていました。

私は、学歴は必ずしも必要ないと思うのですが
リーダーシップは必要だと思います。

また、それだけでなく、多様な視点を理解し、
チームワークができる人材であることも大事だと思います。

この点について、以前読んだ本に参考になる話がありました。
「不機嫌な職場」という本ですが、
グーグルが求める人材像として
以下の2つを満たす人が挙げられていました。

  • セルフスターター
  • コワーク

この2つのキーワードは参考になると思います。


■セルフスターター
「セルフスターター」は、「self starter」です
自分で始められる人、すなわち、
人に言われてからやるのではなく、
主体性を発揮して自分の考えを表現し、
行動を起こしていく、そんな人のことだと思います。

この点は、リーダーシップにも関連します。
リーダーシップと言ってもいろんな意味がありますが、
まずスタート地点となるのは、
自分がリーダーシップを発揮するという覚悟を決める、
腹をくくることだと思います。

例え人から言われてリーダーのポジションについたとしても
一度自分なりにそれを消化して、
自分はやるんだ、自分がやるしかない
と心を決めることが大事だと思います。
そうしないと形だけになってしまいます。

こういう考え方を持てるかどうかというのは
セルフスタートできるかどうかと
相通じるものがあると思います。


■コワーク
もう1つの「コワーク」は「co-work」で
「co」には一緒にという意味がありますから
一緒に仕事ができる人という感じの意味合いです。

すなわち、協働作業を通じて何かを一緒に成し遂げていく、
その中ではそれぞれの価値を発揮して貢献していく
そんなイメージだと思います。

セルフスタートしつつ、自分一人だけで突っ走らないで
みんなの力をあわせ、自分一人でやるときよりも、
また、一人一人の力の総和よりも大きな成果を出す、
そういった人材が求められているのだと思います。


■学び続ける力
グローバル人材に必要なものを考えたると、
リーダーシップ、セルフスターター、コワーク等の
他にも、たくさんあると思います。

例えば、記事中でもあげられていたように
個性や創造性も大事でしょう。

ただ、その中で、あえてもう1つだけ挙げると
学び続ける力が重要だと思います。

まず、グローバルにやっていくということは
自分の知らない世界に飛び込む場面が多くなります。
その時には、まず自分が分からないことを分からないと
明確に自覚して、学んでいくことが大事だと思います。

また、グローバル化が進むと同時に
変化が激しい時代になっていますので
同じ場所にいたとしても周囲の状況が変化します。
ですので、それにあわせてまた自分をレベルアップしていく必要があります。

さらに、多様な人材と仕事をすることになりますので
それぞれのメンバーの視点を学んでいくことも重要です。

これはリーダーシップやコワークとも関連します。
メンバーから学び続ける姿勢がないと
いずれリーダーシップの発揮もコワークも難しくなるでしょう。


「グローバル人材」といった時に
こうした力が大事になってくると思います。


次回、この話と五ヶ瀬中等教育学校の話をからめて
考えていきます。

2012年5月29日火曜日

グローバル人材の教育システムと五ヶ瀬中等教育学校(前編)

先日、グローバルに食っていくためにはという内容で記事を書きましたが、
たまたま、このトピックに関連する記事を読みました。

■グローバル人材の要件
この記事では、グーグル日本法人元社長の村上憲郎さんの話が紹介されています。
ポイントは4つあげられています。
1. 世界はあきれるほどの学歴主義
学歴と言っても東大とか早稲田とかではなく、世界に通用するブランド大学だけが「学歴」

2. 成績が良くて初めて学歴
目を引こうと思ったら、オールAを取り、最優等表彰を受けておくことが必要がある

3. 最低でも修士号
ブランド大学を成績優秀で卒業し、その後それらの大学院で修士号を得る必要がある

4. リーダーシップの証明
「企業内で実際にチームを率いて実績を出した」とか「自ら資金や人材集めて自分のアイデアで起業した」とか具体的なリーダーシップ像を示す必要がある
全部が全部当てはまるとは思いませんが
こういう見方があるということは頭に入れておいた方が良さそうですね。


■世界のエリートは厳しく育っている
また、以下のようにも述べられています。
グローバル人材について考えるなら、話は簡単だ。世界の真のエリートがどんな教育を受けているか知ればいい。これを知ると世界は甘くないことが分かる。

欧米のエリートは日本のエリートに比べて、中高時代に勉強していない印象が一般的にある。それは大きな誤解だ。真のエリートは中高時代から日本人が驚くような教育を受けている。

それはボーディングスクールから始まる。片田舎の巨大なキャンパスで、世界から集まった同世代と全寮制の生活をしながら、哲学、歴史、数学、宗教、科学などを徹底的に叩き込まれる。先生が寮に住み込んでいるので、勉強はいつでも教えてもらえる。

勉強に加えて、スポーツ、チャリティー、音楽芸術にも取り組む。これらの活動を忙しく行いながら、時間管理術を身に着け、自分のスタイルや長所を見つけていくのだ。強烈な詰め込み教育の中で初めて、真の個性や創造力やリーダーシップが獲得できる。グローバル企業や世界各国の政府の幹部はこういう教育を身に着けた連中ばかりである。

多様な人種や信仰に囲まれながらも、歴史や哲学、科学や宗教の知識を正確に幅広く披露できれば、同僚や部下に対して好ましい印象を与えることができる。「この人物は知識の蓄積がある深い人間で、リーダーとして正しい判断ができる」と。
確かに、これぞエリート教育って感じですね。


■ボーディングスクールについて
さて、この中に「ボーディングスクール」という言葉が出てきています。
ボーディングスクールの「ボーディング」は「boarding」で
「寄宿」とか「下宿」とかいう意味です。

ですので、直訳すると、寄宿学校という感じですが
要するに、家から離れて下宿や寮で生活しながら
学校に通うということです。

よく聞くのがイギリスのパブリックスクールですが
アメリカやスイス、オーストラリアにもあるそうです。
あと、詳細は不明ですが中国や韓国にもあるとのこと。



■五ヶ瀬中等教育学校もボーディングスクール
我らが母校、五ヶ瀬中等教育学校も
ボーディングスクールと言ってよいのではないかと思います。
(Wikipediaの記事には載ってないのが残念ですが…)

元々確か創立時にはイギリスのパブリックスクールを模範とした
というような話を聞いていますし、
全寮制で親元を離れて様々な体験をしながら教育をしていくというところは共通です。

また、学校設置の理念を振り返ると、
創造性やリーダーシップ教育というところでも通じるものがあると思います。
フォレストピア学びの森学校設置の理念
  1. 来るべき21世紀の日本を担い、国際社会で活躍する人材を育成する。

  2. 森林という自然を教育のフィールドとして、自然に対する畏敬の念を育て、若人らしい野性味や冒険心の育成と回復に努め、 豊かな人間性と創造力・協調性を培い、主体的に生きる人間の育成を図る。

  3. 主体的な学習や体験学習、体験活動等を通し、自己教育力の育成を図る。
五ヶ瀬中等教育学校HPより引用

こう見てくると、グローバル人材の育成という観点は
五ヶ瀬中等教育学校のあり方を考えていく上でも
非常に重要なポイントかなと思います。

今回はちょっと長くなってきたのでこのへんにして、
次回に続けることにします。

次回は、上の内容を踏まえ、
五ヶ瀬中等教育学校で過ごすうえで
どういう考え方や力を身につけたら良さそうか考えていきたいと思います。

2012年5月25日金曜日

グローバルに食っていくために、まずは英語力(と日本語力)

■日本経済ヤバいよね
先日、僕の会社のCEOからメールが送られてきて
次のサイトのURLが記載されていました。
このサイトでは、日本国債がどのような状況にあるか
ということがグラフで分かりやすく示されています。

全体的なメッセージは、
あまり明示的には述べていませんが
端的に言うと、「日本ヤバいっちゃねーと?」ということでしょう。


■CEOからのメッセージ
CEOも同じように日本経済のことに関心を持っていて
日本のことを心配しています。

彼は日本のことが好きで、特にホンダの歴史を
日本経済や若者の将来のことを心配して
結構いろんなメッセージを送ってきてくれます。

このサイトのURLを送ってきたときに
沿えてあったメッセージを紹介したいと思います。

"Be prepared to "globalize" your skills, so you can work in Singapore, US, India etc. because I don't think this situation is sustainable at all. I would urge every young Japanese employee to work hard on English skills."

(シンガポールやアメリカ、インドなどでも仕事ができるように、自分のスキルを「グローバル化」するように準備しときなさい。今の状況が持つことはないだろう。日本の若い社員は英語のスキルを磨くように強くすすめる)

■「その時」に備えるための英語力
日本国債の発行が限界を迎えたら
日本の経済状況はどうなるのか分かりません。
というか厳しい状況になるでしょう。

CEOも言っていますが、いざという時に向けて
最悪どこででも食っていけるようにするには
英語のスキルは最低条件だと思います。

前回の「「英語力の礎に日本語鍛錬」という記事から思うこと」
という記事の内容と一見反するように見えるかもしれませんが
結局のところ、英語力も日本語力も両方必要だと思います。

順番としては、英語より
まず日本語で自分を表現するように練習した方が
スムーズにいくと思います。


■英語を「使う」
ただ、いずれにしても、最終的には
英語をツールとしてはしっかりと使えるようにする必要があります。

「使える」というのは、
流暢に話せるとか単語をいっぱい知っているとかそういうことではなく
英語を「使って」コミュニケーションがとれるようになるということです。

ゴールとしては英語で自分を表現することなので
結局どちらの言語でも表現する力が必要になってきます。

英検とかTOEICとかTOEFLとか
いくら点数が高くても、英語を使って
コミュニケーションがとれなければ意味がありません。

そして、コミュニケーションをとるためには、
日本語でも英語でも、あるいは言葉を使わなくても
自分自身を表現できる必要があります。

堂々巡りのような感じにもなってきましたが、
世界に出て行っても仕事ができるようにするには
英語がベースになりますし、
さらには英語だけでなくていろんなスキルを身につけんといけない。

厳しい時代になったなーとも思いますが
その分チャンスや変化も多くて面白い面もあると思うので
そういった中でどう状況に備えて、どう生きていくか
僕自身も改めて考えていきたいなと思います。

2012年5月24日木曜日

「英語力の礎に日本語鍛錬」という記事から思うこと

■「英語力の礎に日本語鍛錬」という記事
先日の読売新聞に面白い記事が載っていました。
「大学の実力」というコーナーで
「英語力の礎に日本語鍛錬」というタイトルの記事です。

以下、内容を紹介します。
英語力の礎に日本語鍛錬

ビジネス社会の国際化を意識してか、「大学の実力」調査で語学以外でも英語による授業を導入していると答えた大学は11%に上る

◆宮崎国際大学の場合、18年前の開学以来、必修の「日本語表現」などごく一部の授業を除き、全て英語。外国人教員が8割を占め、2年生後半には全員を海外で学ばせる徹底ぶりだが、意外にもその礎は「日本語教育にある」(隈元正行学長)という

◆「日本語表現」で、討論やスピーチ、新聞講読、論文執筆などに取り組み、聞く・話す・読む・書くの能力向上をを図る。加えて2年前には、留学先で自国の政治、経済や歴史を語る欧米の若者の輪に入れなかったという学生の嘆きを元に「日本語研究」の授業も必修化した

◆4月上旬の授業では、方言や敬語を題材に、地域と言語の関わりを討論していた。「あなたの地域で『疲れた』はどう表現する?」。担当の前田博教授の問いに、学生はそれぞれの出身地の言葉を話す。「日本や世界のことを考え、知る上で、日本語は素晴らしい入口」と前田教授

◆英語力要請に日本語の鍛錬。迂遠に見える方法がどんな花を咲かせているか。

―読売新聞 2012年5月18日 14面

■英語の前に日本語
「英語力の礎に日本語鍛錬」というタイトルですが
これは私も同じように感じています。

日頃から仕事で英語でやりとりをする機会がありますが
そもそも日本語で何を言いたいかを
自分の中ではっきり整理できていないと
いくら英語が話せても意味がありません。

上記の記事でも、「日本語表現」という授業で
討論やスピーチ、新聞講読、論文執筆をやると書いていますが
このねらいは、自分の頭で考え、表現することを
まずは慣れ親しんだ日本語でできるようにする
ということだと思います。

その上で、母語ではない英語でも
同じように表現できるようにするというステップなのかなと思います。

結局、日本語、英語というところに限らず、
まずは自分なりに表現するというベースができてはじめて
語学力の問題になってくるのかなと思います。
そういう意味ではとても有効な取り組みではないかなと思います。


■世界の前に日本、そして宮崎、五ヶ瀬
もう1つ面白かったのが、
「日本や世界のことを考え、知る上で、日本語は素晴らしい入口」
という言葉です。

これも同感です。
まずは自分自身のこと、自分の国のことを知ることが
世界でコミュニケーションをとっていく上で大事だと思います。

例えば、僕の場合、インドの人とコミュニケーションをとる機会が多くありますが
その中で、日本はどういう国なのか、どういう歴史、文化を持ち、
そしてそういう背景を持つ中で僕自身はどういう考えを持つ人間なのか
ということが問われてきます。
(上の記事でもそう)

そして、僕自身も相手に似たようなことを聞いたりします。
そうやってお互いのことを知ることが
コミュニケーションのプロセスの中では非常に重要になってきます。

そのために、まずは日本や日本語を
入り口として学んでおくというのは有効だと思います。

さらに言うと、世界への入り口としての日本、
世界への入り口としての宮崎、五ヶ瀬というふうに考えれば
五ヶ瀬中等教育学校で学んだこともつながってくると思います。

僕自身も在校時には、五ヶ瀬で学ぶことは、地域に特化したことで
そこでしか通用しない知識や経験のように感じるところもありました。

しかし、逆にそこでユニークなことを学んだからこそ
その後違う場所に出て行った時に
自分自身を表現しやすくなり、
相手とコミュニケーションもとりやすくなっていると思います。

ですので、地域に特化したことを学ぶことは
決してその地域で限定された意味を持つのではなく、
もっと幅広いところにつながる面があると思います。


■大学での取り組みについて
宮崎国際大学がこのような取り組みをしている
ということは知らなかったのですが、とても面白いですね。

自分は、高校の時に、高3の最初くらいまで
立命館アジア太平洋大学を第一志望にしていたんですが
そのことを思い出しました。

なぜかというと、志望していたのが
学生や教員の半数以上が海外から来た人で
面白そうだったからという理由だったからで
外国人教員が8割を占めるというところに関心を惹かれたからです。

灯台下暗しというか、恥ずかしながら知らなかったんですが
自分の地元にこういう大学もあったんだなーと
目をひらかされた感じがします。


■学長の方について
ところで、若干余談ですが
よく見たら、この隈元正行さんという学長の方は
僕の母校の五ヶ瀬中等教育学校で校長を務められていた方です。

在校の期間は僕も重なっていますし、
最近フェイスブックでもつながったところだったので
ひったまがりました(びっくりしました)

宮崎国際大学の学長になられていたことも
フェイスブックで知り、発信されている内容をみると
大学ではいろいろと面白い取り組みをされている様子が伝わってきます。
上記の取り組み含め、注目してみたいなと思います。

2012年5月13日日曜日

マークシート方式のみで数学を受験した層はパターン化された誤答に陥りやすい?という話と数学を勉強する意味について


先週の読売新聞の「論点」欄に
「大学生の論理力不足 数学入試多様化の弊害」
というコラムがありました。
(著者は国立情報学研究所の教授の新井紀子さんという方です)

以前このブログでも書いた記事とも関連する内容なので
ちょっと紹介したいと思います。

■大学生の論理力が低下?
大学生の学力低下の話は
いろんな人がいろんなことを言ってるんですが
この記事では特に論理力に着目しています。
「2000年に実施された国立大学学部長に対するアンケートによれば、学生の学力低下の状況を尋ねた項目のなかで『論理的に思考し、それを表現する力が弱い』という選択肢に突出して8割の回答が集まった。
企業の採用担当者からもしばしば同様の印象が語られる。社会に出ても、論理的思考力は相手にわかりやすく説明する、あるいは状況を冷静に判断する際などに不可欠だ。」

■その根拠は?
この後、論理的思考力の不足を裏付けるデータとして
日本数学会が実施した「大学生数学基本調査」の結果が引用されています。

関連情報はこちら↓


上のページにそもそもこの調査を行った理由が書いてありました。
「2000 年代になると多くの大学では、大学本来の数学教育を始めるための前提条件として、高校数学の補習授業を行うことが必要となりました。ここ数年に至っては多くの会員から、「入学試験や1年生の期末試験における数学の答案にまったく意味の通じないものが増え、どう対処したらよいか当惑している」という声が寄せられています。教育委員会メンバーがさまざまな大学の教員から意見を集めたところ、論理的文章を理解する力、論理を組み立て表現する力が学生から失われつつあるのではないか、との危惧が教育現場に広がっていることがわかり、今回「大学生数学基本調査」を実施することとなりました。」
この調査自体、そもそも論理力不足への懸念から行ったようですが、
「どう対処したらよいか当惑している」具体例が
「論点」欄の内容に挙げられていました。

例えば、以下のような問題と回答です。

  • 偶数と奇数の和が奇数になることの論証をする問題
    解答:「なるものはなる」
  • 二次関数のグラフの特徴を挙げる問題
    解答:「細い」「右上」「二つある」

2つ目の問題は論理力との関係は見づらい気もしますが
証明問題はまさに論理力が問われるものなので
「なるものはなる」だと確かにちょっと頭抱えてしまうかもしれないですね…


■その原因は?
論理力低下の原因についてですが、
これは意欲が低いからかというと
そういうことでもないみたいです。
「大学生の学ぶ意欲が過去に比べて低いわけではない。授業への出席率も高い。にもかかわらず、理解しがたい深刻な誤答に至った」
と述べられています。

原因について別のポイントが挙げられており、
答案の傾向と背景を分析したところ、
以下のようなことが分かったと述べられています。
「大学入試で数学を受験しなかった層は、論理的な説明から程遠い答案を書きやすく、マークシート方式のみで受験した層はパターン化された誤答に陥りやすい。
他方、記述式の数学入試を目指して勉強した層は正答に近かった。正答への近さ・遠さは、数学の得意・不得意や理系文系の差よりも、大学入試での数学の受験方式による影響の方が大きかった。」
つまり、大学入試の受験方式が大きく影響しているとの主張です。

大学入試のうち、一般入試での入学が半数に過ぎず、
推薦入試やAO入試が増えてきて受験科目数も減り、
理工系ですらマークシート方式のみの数学受験で
入学してくる生徒も少なくない。

こうした大学入試での変化が高校現場での教育に影響し、
結果として学生の論理力の低下につながっているという話です。
「大学入試は中等教育の在り方に大きな影響を与える。かつては、大学に入学するには数学を克服する必要があった。現在では、「苦手な科目を克服するより、受験方式に特化した勉強をさせたほうが効率的」との風潮が高校現場にはある。その結果、学生が本来身に着けるべき基本的な論理力を習得する機会を奪ったとも考えられる。」

■数学を勉強する意味
上記の主張については、いろいろ検証すべきところもあるとは思いますが
1つの視点としては重要かなと思います。

また、このブログでも以前書いた勉強する意味という観点で
大事なポイントが述べられていると感じました。


数学の問題、特に論述式の問題への回答では
順を追って読み手に分かるように
答えまでの道筋を説明することが求められます。

数学の問題を解くというところだけを見ていると
確かに実生活で意味があるようには見えないかもしれませんが
論理力を鍛えるという観点からはとても意味の大きい科目です。

冒頭で企業の採用担当者の声も紹介されていましたが
論理力は社会に出てからも必要とされる力です。
この力を身につけるためには数学は役に立つところがあると思います。

と言っても、僕自身は、数学のマークシートは別として
論述式の一般入試問題は苦手だったので何とも言えませんが…

ただ、それに取り組んだことは今に活きている…ような気もします。
社会に出た今になってからもう一度数学の問題とか解いてみたら
意味がもっと分かるかもしれないですね。
機会があったらやってみようかな。

2012年5月6日日曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 田村康一郎さん(6)

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー、
田村康一郎さんのインタビューの続きです。

今回で最後ですが、今回は、
五ヶ瀬で学んだことで今に活かされていることについて聞いていきます。

前回までの記事はこちら↓

中華街を後輩の甲斐考太郎さんと練り歩く
■五ヶ瀬での経験が今に活かされていること

―最後の質問やけど、五ヶ瀬で学んだことで今に活きていると感じることってある?仕事でもいいし、仕事でなくても今にどうつながってるかっていうところで。

考えてみたらそうかなーというぐらいですが。結構いろんなところに行って、わりと違和感なく生活できたりするのは、6年間、狭い宮崎とは言えある意味、異文化な人たちと過ごしてきたことが、多少は生きているのかなと思いますね。


―海外への興味っていうのは五ヶ瀬時代からあったの?

そうですね。結構留学したいなみたいなのはぼんやり思ってました。


―あんな山奥にいてそれはどっから来てたの?

何でしょうね…確か将来何になるみたいなのを考え始めた時に、国際公務員とかそういうのってすごいんじゃないって思ったのを覚えてます。なんでそう思ったのかという過程までは覚えてませんが。

うーん…記憶の糸をたどると、結構図書室でごろごろしてて、紀行文とか旅行の話が好きだったので、そういう憧れがあったのが影響してるかもしれませんね。

また、その時だったのか覚えてませんが、その時興味を持っていた環境問題を考える上で、世界中の人達がぜいたくな暮らしをし始めたらやばいことになるっていう本も読んだりしてたのも思い出しました。直接その本がっていうのでもないんですが、そういう途上国での生活に関する問題もどうにかうまいこと考えていかないといけないんじゃないかっていう問題意識はあったかなと思います。

あとはうちの学校の人は思いやりのある人が多いですよ。社会に出てみても、わりと変な人って多いじゃないですか。そういうところで思いやりができる人は、五ヶ瀬の人で多いんじゃないかなと思いますね。

例えば、隣に横で寝たり勉強している人がいる中で、どうするのが良いんだろうっていうことが考えられるのは、寮で一緒の部屋で生活をしていたからだと思います。わりとそういうのがダメな人とかいますから。そういうのって結構大事なんじゃないかなと思います。五訓というやつで言うところの恕とか妙に当たるんですかね。


―こういうことをしておけば良かったなというのはある?

今となって思えば、後悔以外の何物でもないんですけど、もっと剣道やれたかなと思ってます。


―もっと!?十分だろー(笑)まだかよ。

やっぱ勝ってなんぼだろぐらいの(笑)。とか言って、その場におかれたらたぶんすぐ音をあげますけど。あの運動量と勉強量は今じゃとてもできないですけど。どM発言ですね(笑)。
一生懸命打ち込むと、将来こういう軟弱なことは言いませんよっていうことですね。


―オチがついたな(笑)本当はなんで五ヶ瀬に入ったのかとか聞きたいんですが、今日は甲斐孝太郎君の話も聞きたいので、またの機会に聞きたいと思います。ひとまずありがとうございました。



今回で田村康一郎さんのインタビューは最後です!

2012年5月5日土曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 田村康一郎さん(5)

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー、
田村康一郎さんのインタビューの続きです。

前回は、仕事で面白いところについて聞いていきましたが
今回は、逆に大変なところについて聞いていきます。

前回までの記事はこちら↓


太平洋を遠い目で見つめる田村さん
■仕事で大変なところ

―逆に大変なのはどういう時?

一年目は大変でしたね。自分は海外に行くこと自体は慣れていたと思ってたんですけど…

最初は調査チームの工程とかを若手が全部担ってバシッとアレンジして向かわなきゃいけないんですが、そのあたりのビジネス上の時間感覚とか、自分で好き勝手に旅行する以外でのマネジメントみたいなところとか、複数の仕事を同時並行でこなさなきゃいけないとか、そういうのがなかなか慣れなくて。

それで時間がないうちにバタバタバタって行かないといけなくて、「どうしようどうしよう」ってなるのはありましたね…


―それは学生から社会人へのスイッチの切り替えやね。

なんも研修無しで、オンザジョブ(OJT)でした。


―新入社員は何人くらい?

最近は2年に1人ですね。


―ああ、じゃあ研修とかしっかりやる感じじゃないね。でもそれこそが田村が民間企業に求めてたもんじゃない?

そうですね…ただ、そこで結構大ゴケしました。3週間で3か国を回る調査があって、1つの国に2回入ってるので実質的には4か国だったんですが、その調整が全然間に合わなくて。

それとは別の仕事も抱えてる時期で、そのアレンジ、下準備もしなければならないっていうのが重なって追いつかなくなってきて…


―アレンジっていうのは現地と連絡とってやらんといかんの?

現地と連絡とってやりますね。最初はなかなか準備などの面が多くて、中身の話とかにはまだあまりかかわらない感じでした。


―おお、それはどうやって乗り越えたの?

しばらくは出張はなかったんですけど、その後に半年くらい経った後に、似たようなすごい手間のかかるセッティングをしなきゃいけない調査があって、それを国内サポートだけど仰せつかりました。これで挽回せにゃ次はないぞと思ってやりきってなんとか自信を取り戻した感じです。


―じゃあその期間は結構辛かった?

そうですね…追い込みすぎていてもう少し行くとひょっとすると立ち直れなかったかもしれないので、自分で振り返っても人生で一番ヤバかった時期でしたね…


―知らないうちにそんなところ乗り越えてたんやね。それはでも職場の人が良いサポートをしてくれてるよね。

そうですね。少しだけ休みをもらったら重いものはとれたので。


―じゃあ今は結構自信を持ってやってる感じ?

まだ全然勉強は足りていないところはありますけど、3年経てば慣れてきたところはあります。



今回は以上です!

2012年5月4日金曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 田村康一郎さん(4)


五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー、
田村康一郎さんのインタビューの続きです。

今回は、今の仕事について、特に、開発援助の世界の現状や仕事の面白さなどについて詳しく聞いていきます。様々な国を見てきての話が特に面白いです!

前回までの記事はこちら↓


横浜の港を背にする田村さん
■開発援助の世界について

―会社に入る前と入った後で何かイメージは変わった?

そうですね…開発援助の世界っていうのも、業界的に今は変革期になっているんですね。

途上国に流れるお金の中で、公共のお金であるODAなどのお金っていうのは、割合で言えば少ない側になってきてるんです。この20年で金額としては民間投資とか出稼ぎ者の送金とかがすごく伸びているという意味で。


―それは日本がODAを減らしてるからとかではなくて?

そのような出し手側の事情もあるのと、受け手側も成長しちゃって「もういりません」というのがあります。さらに言うと、第三者が出て来たのもあります。

新興ドナー、中国をはじめ、ブラジル、韓国、それにインドも力を入れると言ってますし。そういうところもODAの出し手になってくると、供給過多になってきています。


―日本のプレゼンスっていうのは落ちてるの?

それは結構地域によってくるところもあります。そういう状況がある中で、途上国でインフラを造るということに関して、今までとは別のやり方が現実的なオプションとして増えてきているということです。


―別のやり方っていうのは?

例えば、完全に民間ベースでできることはやっちゃったりしますし、半々でやったりもします。ちょっとまた小難しいことを言いますけど、開発コンサルっていうのは今までパブリック(公共)の発注だけでやってきていてそれだけだと尻すぼみになるので、ちょっと違うやり方を考えないといけなくなりつつあります。


■仕事で面白いところ


―ところで、仕事をやっていてどういう瞬間が楽しい?

すごい身近なところから言うと、世界各国につながりができるっていうのは非常に楽しいですね。違いを見て、ここはこういう感じかとか発見したり。

例えば、中東の人を研修で東南アジアに連れてった時は、全然気候やカルチャーが合わなくてかなり大変でした(笑)


―へえ、どういうふうに?

イスラムの料理をちゃんと食べられるところに行って、肉とかもちゃんと処理してるからって言うんですけど、味付けがインドネシアのものと中東のものでは違うらしくて、「こんな辛いのは食べられない」って言われたりしましたね。


―え、辛いのダメなの?

そうですね、甘党ですから。


―へー、中東も辛党なイメージがあったけど。

いや、そんなのはないですね。そういうのとか、全然外に出る機会がない国だったらおのぼりさんみたいな感じで観光に行ったりとか。実務的なレベルで言うと、ちゃんと名刺持ってこいとか、ちゃんとノートとれとかそういう話からあるんですけど。


―そんなところからなんや(笑)どういう立場の人が来るの?

その時は工業団地の広報部長とかプロジェクトリーダーとかですね。政府系です。それに比べるとベトナムとかインドネシアとかは本当に隔世の感だなと。


―それはどういうこと?

自分の場合、海外専業みたいな感じなので、日本との比較というよりは、国の間での比較になるんですけど、お金をもってない方の中東の国と比べると、ベトナムやインドネシアは人の能力的にすごいですね。


―どういうところを見てそう思うの?

段取りとかそういうところから始まったり、ちゃんと政策的にこういうステップでこうしていけばいいというような自分たちの戦略がちゃんとあるし。お金の出し手を手玉にとってやろうというところもあります。インドとかその最たるものですし。

それとちょっと逆みたいなところで言うと、私がよく関わっているパレスチナの場合は結構逃げ口上を使って、極端な話「イスラエルがいるから俺たちはダメなんだ」と言っておけば助けてもらえるというような、哀しいことですが60年間培われてきた負のメンタリティがあります。


―日本もやばいよね。メンタリティ的にそうなるよね。おれらも物心ついてからずっと景気悪いし。なので、なんかこう上向く感じって言うのを経験しないと、そのまま次のサイクルに行っちゃうよね。不況出しとか言い訳しだすと似てるよね。

そういうところだと、伸びつつある地域は、不便なところもまだあるけど行って面白いなというところもあります。現地の人も結構勉強熱心ですね。それは、やったらやっただけついてくるという段階にあるからかなと思います。


―例えばどういう国?

ベトナムとかだと、事務所のスタッフでもフルタイムの仕事が終わった後に学校に行く人とかいます。あとはホテルの受付の人とかキッチンの人とかでもそんな感じで仕事が終わった後に自分で学校に行ったりしていて、自分はこれを勉強してこういうことをしたいっていうのがあって、頭が下がります。


―面白いね。

逆に、頑張ってもなかなかそれだけの職や労働需要がないところはまだそんなインセンティブがないのかなという気がします。アフリカや中東でやった仕事だとそんな感じですね。直観ベースの話ですけど。


今回は以上です!

2012年5月3日木曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 田村康一郎さん(3)

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー、
田村康一郎さんのインタビューの続きです。

前回に引き続き、今の仕事をやろうと思った経緯について聞いていきます。

前回までの記事はこちら↓


中華街で杏仁ソフトを食べる田村さん
■大学でやったこと

―大学に入ってみて何かイメージが変わったこととかあった?

そうですね…生活基盤とか日々の暮らしの中で、どういうふうにライフラインが成り立っているのかというところに意識が行くようになった気がしますね。


―学部の後大学院には行ったんだっけ?

行きました。そのまま土木系の持ちあがりではなくて、ちょっと卒論の指導教員に引っ張られて、新領域という学科に進みました。もっと国際関係よりのところです。


―卒業論文と修士論文ではそれぞれ何をやったと?

卒論では紛争終結国におけるインフラ整備みたいなものでしたが、内容的には全然いけてなかったです。修論では、国際物流関係のことをやりました。

具体的には、タイとマレーシアの間で陸続きになっているところの間で、物流がどういうふうに成り立っているか、何が何によって運ばれているか、そういうものをまとめました。


―卒論がイケてないっていうのはどうして?

質の問題ですね。まったく狭く浅い分析でした…とりあえず何か読んでまとめた程度ですね。


―浅いフォレ研みたいな(笑)

そうですね。ひょっとするとそれにも劣るかも…(笑)


―まあ確かに今見返すとフォレ研も結構質が高いものがあって、大学の卒論くらいのレベルのものがあったりするからなあ。

そうですね。先生や先輩に手伝ってもらって学会のようなところで発表しても良いんじゃないかとも思ったりします。


―じゃあ交通が専門みたいになってると?

そうですね。幸いなことに修論で書いたようなことと似たようなことを仕事でやっています。活かせていて良いなと思ってます。


■今の会社を選んだ理由

―大学院に行って就職しようとした時の選択肢がいくつかあったと思うんやけど、JICAとか国際機関とか公共系のところではなくて、何で民間のコンサル会社に進んだと?

言ってしまえばマイナーな業界なんですね。国際協力をしようと思った時に最初に思い浮かべるのはJICAとかだと思うんですが、JICAはゼネラリストっていう感じなので、大学で学んだ専門を活かすっていうのとはちょっと違うなと。

技術的な分析とかは、外注のコンサルタントにやってもらったりするので、マネジメントと調査を受けて相手国と政策協議したりとかがメインです。


―田村は結構ガッツリ研究していたので、もうちょっと深くやりたいという感じ?

そうですね。インフラを計画する時に、具体的な内容に関われるのはコンサルタントだなと。JICAとかに行ったら政策レベルの話はできるっていうのはありますが、それよりはもっとテクニカルな面にフォーカスしたいっていうのがありました。

あとは民間の会社っていうのが1つのポイントでした。ある程度シビアなというか、ちょっとコストがかかっても潰れるか潰れないかというプレッシャーが弱い所よりかは、そういう感覚がきちんと分かるところに行きたいなと思っていました。


―それは何でそう思ったん?

そこで働いている人に実際に会って話してみた時の感覚もありますが、自分が学生の頃はコスト感覚や利益感覚があまり無いなというのがあって、そのあたりを意識して行ってみようかなと思っていました。そうでないと、非効率なところもたくさんあるんじゃないかなと思っていたのもあります。

ちなみに、他にどういうところを考えていたかというと、ゼネコンとか商社ですね。国際的にできるっていうところと、インフラに関われるっていう軸で考えるとそういうところでした。


―最終的にその会社に決めたのは何でやったん?

研究室の先輩が行ってたっていうのもあって、雰囲気がよく分かっていたっていうのがあります。あとは、業界の中で見て、自分のやりたいことに近いことをやっているという会社でした。

日本の中でも国際的な会社で、外国人社員が多くいたり、国際機関の仕事をとってきたりと、そういうところでも面白そうだなと感じていました。



今回は以上です!

2012年5月2日水曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 田村康一郎さん(2)


五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー第3弾、
田村康一郎さんのインタビューの続きです。

前回に引き続いて今やっている仕事の内容についてですが
今回はその仕事をやろうと思った経緯について聞いていきます。

前回の記事はこちら↓


■今の仕事をやろうと思ったきっかけ

―そもそも何でその仕事をやろうと思ったの?

1つは、学生の頃から海外、特に途上国に行って、こういうところで仕事ができたら面白そうだなと思ったのがあります。その次に、インフラのことがしたいというのがありました。


―その海外に行きたいっていうのはそもそも何でなの?

インフラをやりたいっていうこととつながっていますね。海外に行って帰ってくると感じるんですけど、国によって全然生活環境が違うんですね。東京を中心とする首都圏だと何千万人という人口がいますが、毎日通勤とかほとんどスケジュール通りにできています。

ですが、国によっては電車とかなかったり、渋滞で全然動かなかったり、しょっちゅう停電が起きてネットが全然つながらないよとかそういうところもあります。そういうところに何かを造って生活が変わるっていうのはすごいことだなと思いました。

実際にやっていて、問題はありつつも伸び盛りの環境で仕事をしていると、活力を感じられて楽しいというのもありますね。


―何でそういうところの手助けをしたいと思ったんやろか?

この仕事をやってる人の中でも結構違うんですが、自分の場合は、役に立ちたいという想いがある一方で、ある意味自己中心的な動機もあります。開発プランとかインフラをつくって何かしらそれが結果として形に残っていくということが、モチベーションにつながっています。そういう部分もあるので、必ずしも純粋にボランタリーな気持ちでやっているわけではないです。


―前にテレビのコマーシャルで、ある建設会社のキャッチフレーズで「地図に絵を描く仕事をしよう」っていうのがあったよね。あれはすごく心を揺さぶられるというか良いキャッチフレーズやと思ったけど、ああいうことかな?

そうですね。大学で土木系に進学したので、そういうマインドでした。


―そもそも文系(文科三類)だったのに何でそっちの方向に行ったの?

そこも語る必要があるかなと思いますね(笑)。最初大学に入った時は文系でした。環境問題関係のことをしたいとは思っていたんですが、具体的にどういうアプローチかはまだ分かっていませんでした。

それで大学に入学してからもいろいろ専門課程の進学先を選べたので、そこでいろいろ見ていました。そこで、何かの拍子にもぐりこんだオムニバス講義が土木系で、その時に聞いた言葉が印象に残りました。

「土木、インフラが文明を創るんだ」という言葉ですね。ローマの街道や水道は有名な話ですし、中国とかも千年前に造られたもので今も使われている河川の堰みたいなものもあるという話でした(※都江堰という堰)。

そういうインフラによって人の住まい方とか生活の仕方が規定されてきたのだと実例で紹介されていて、「なるほどな」と思って。元々興味があった環境問題にもつながるところだったので面白そうだなと。

まだインフラとかが整っていない国とかで、これからそういうものを造っていくのにちょっとでも関われるというのはすごいことだなと思って関心を持ちました。


―じゃあその講義で影響を受けて、そのままそういう方向に進んだと?

そうですね。そんな感じで決めました。



今回は以上です!
次回も引き続き、大学から仕事に至るまでの過程について聞いていきます。

2012年5月1日火曜日

五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー - 田村康一郎さん(1)


五ヶ瀬中等教育学校卒業生インタビュー、第3弾!
今回は、田村康一郎さんです。

1997年に入学し、2003年に卒業ということで僕の2学年下の後輩です。

文系で入学したのですが工学部に進学し、そこで勉強した社会インフラ関係のことがそのまま仕事につながっています。

開発途上国向けの仕事で、世界各地を飛び回りながら仕事をしているので日本ではなかなかつかまりませんが、帰って来ているところをつかまえて話を聞きました(^ ^)

今回は、横浜の中華街でさらに1つ下の後輩の甲斐考太郎さんと一緒にご飯を食べながらインタビューしました。

今の仕事や大学での話を中心に、五ヶ瀬中等教育学校のことについても聞いていきます。


■仕事でやっていること
―今の仕事で何をやってるか教えて。

今の仕事はですね、ODAと呼ばれる政府の開発途上国援助に関する仕事です。このODAに関する調査とかトレーニングとかをお手伝いするコンサルティングの仕事をやっています。


―どういうところに行くの?

場所で言うと、援助を出す国全般は対象になります。自分が行った国では、先週行ってたのがモンゴルです。その前は東アフリカのタンザニアっていうところに何か月かいました。あと長いのはパレスチナです。あとはベトナムとか様々です。


―何か国くらい行ってると?

業務渡航で行った国では、単純に国の数で言うと短期間のものも含めて10-15くらいですね。


―それはどういうふうに仕事が入って来るの?

基本的には公共のお仕事です。JICA(国際協力機構)とか、その国の機関とかがほとんどです。あとは国際機関とか現地政府とかからも受けます。すべて公共のお仕事なので、提案書を書いて見積もりを入札に出して、それの評価で選ばれるという感じです。


―行って具体的に何をするの?

すごいざくっと言えば、調査です。聞き取りとかですね。自分は交通系のプロジェクトが多いので、交通調査とかです。たとえば、貨物トラックの行き先をアンケート調査したりして、今どんなふうにヒト・モノが動いているのかを解析して、それを元に将来の需要予測をする。

それで何をするかというと、その調査・分析結果をもとに、将来こういう道路や駅、あるいは港を造りましょうという提案をするというのが仕事のやり方の1つですね。


―他には?

他にはあと2つくらいタイプがあって、1つはトレーニングです。もう1つは、実際にインフラを造る時のマネジメントです。

トレーニング系のものでは、例えば中東でやっている仕事があります。工業団地の立ち上げをしたいっていうプロジェクトなんですが、まだその国では稼働している工業団地が存在しないので、手続きとか組織の体制強化とかを手取り足取りしながらお手伝いをするという仕事です。これはレポート書いて分析してと言うより、むこうの相手先の機関と一緒に「こうしたほうがいい、ああした方がいい」と進めるものです。

3つ目が、最初の交通調査とも少し関連してくるんですけど、道路や橋などのインフラを造ることになった時の仕事です。実際にものを造るのは建設会社や商社の仕事なんですが、そこがちゃんと工事をやってるのかとか、お金がちゃんと支払われているのかとかといったことを発注者との間に立って監理するという仕事です。


今回は以上です!次回はこの仕事をやろうと思ったきっかけについて聞いていきます。